top of page

ヤマヴィカ映画史7


(写真:アムステルダム空港に到着後の筆者 2017年5月)

老いた人たちは、独り静かに、夕暮れ刻のベンチに座り、

黙ったまま、沈んだ太陽のあとを眺めている。

或いは、眠れず、カーテンのない青白い夜明けの窓を見続けている、その情景。

すべての物象が寝静まったどこそこは、

亀に股がった浦島太郎の向かう未だ見ぬ海底の龍宮城の印象。

思い出すのも遠い、むかしのことばかり。

幼年期の記憶がおぼろげに浮かんで消える、

極端な無邪気さと馬鹿馬鹿しさ。

夢とは「苦しい忍耐を要する実践と映る」ことか。

懐かしくって、切なくって、哀しいそれらを、

どうずることも出来ないで眺めているのだ。

しかし、実感の伴わない名目などいらない。

恥ずかしさを感じなくてはいけない。

その行為の、わずか瞬時の自明こそが、いつしか、

一本の緑色の光線となることを祈るばかり。

★(続)


閲覧数:71回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page