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Last Romanticism –
最後のロマンチシズム
ISAO YAMADA
3 – 14 March, 2026
MimosaGallery,
Omotesando, Tokyo


「たぶん、小学校4、5年生だった。学校の近くに小さな沢があり、綺麗な、透きとおる小川が流れ、小さな沢蟹もいた。大きな木がすぐ傍にあり、その根が、水分を含んだ上質でぽっかりくりぬかれ、洞穴になっていた。初めての燐寸。家から持ち出し、その洞穴でシュッ!その頃、祖母ヒナに連れられて、初めて映画館の暗闇に入った。終わりなきマッチと映画の出会いは、このように始まり、そしていま、またここでマッチの灯を燈す。Yamavica 2026.2.25 pm 4h07」
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや
寺山修司(*)
夜。津軽海峡の港町。
霧が立ち込めている。
外套を纏い影のように歩いていくと、汽笛が聞こえる。
重なるようにカモメの鳴き声。
灯台の灯りが霧に滲んで廻っている。
防波堤を歩いていく靴音と波音が止む。沈黙。
うつむく横顔。
ポケットから燐寸を取り出し日を点ける。
音と焔。
霧の中の風景を見渡す。
この一首が、此の世で初めて覚えた歌だった。
1971年に風土社から出た『寺山修司全歌集』。
ずいぶんと紙魚をつけてしまった。
55年も過ぎた今もなお、この歌が鮮明に、
夜と、霧と、海の匂ひで包み、私を孤立させる。
そういえば、ヘッセの詩に、霧はすべてのものを孤独にする、
というなのがあったことを思い出した。
ー最後のロマンチシズム、マッチ映画展が始まる。
山田勇男 2026年3月2日夜10h14 記
*第一歌集『空には本』(1958年場場書房刊)祖国喪失 壱より



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