(写真:『夢のフィールド』(1990)より 右から湊谷夢吉、山崎幹夫、正木基、著者 『巻貝の扇』撮影風景)
今年のストックホルムの個展では、公開制作のようなことはしなかった。
モチーフになっている写真集『Les Illuminations cinémathèque』の、
未だ完成していない映画について巡ると、
何となく、今までの映画について、
思いつくまま綴ってみようと思った次第である。
書き進めていくうちに、
多くの出会いと、その人たちのちからが、
どれほどそれぞれの映画に反映しているかが思い起こされる。
これらの映画には、他者のなかに鏡のように「私」を見つけたり、
私を感じたり、「私」を教えてもらったり、「私」を気づかせて呉れている。
いつも「私」は他者のなかにいるとの感慨を持つのである。
いつだったか、湊谷さんに、
いつものように大きな不安のなかでじたばたしているとき、
みつけたり、思いついたり、目の前に現れてくる答を得たような実感を話したとき、
湊谷さんは静かな口調で、
「山田くん、それは偶然でもなんでもない。山田くんがちゃんと求めているからだよ。」
と云って笑った。
そんな、湊谷さんが未だ若い無知な田舎者の「私」にとって、
どれだけ心強かったことか。
銀河画報社で映画を始めて40年、
湊谷さんが逝って29年になる。
★続