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山田勇男

ヤマヴィカ映画史25


(写真:ヤマヴィカフィルム謹製スタンプを押す筆者)

今回の展覧会は、絵葉書とポスターで構成している。

絵葉書は、昔のモノクロ写真の手彩色よりも

(メリエスの映画『月世界旅行』(1902)のひとコマひとコマの色付けしたフィルムを思い出す)、

もっと「錯乱」したイメージが欲しくて、

カラーインクで即興的に彩色をした。

そこにランボオの『イリュミナシオン』の詩句を書き入れ、未使用切手を貼った。

友人に頼んで「ヤマヴィカフィルム謹製」のオリジナルスタンプを作り、

届いてさっそく、切手の上にポンっと押したら、

二重押しのようになったり、押されない部分ができたり、

試し押しではうまくいったのに、ガックリ。

そこで、思い出したことがある。

1974年の春、寺山修司から、東京都美術館での展覧会に出品するオリジナル絵葉書のために

「犬神兄弟写真商会」というスタンプのデザインを頼まれ、

できあがったものを搬入前日に押しなさいと手渡された。

その時、半分くらいしか押し切れなかった。

文字も入れ、切手も貼り、最後の仕上げという段階での失態だった。

二度とやり直しのきかないもので、そのまま出品された。

寺山さんから「山田は、本番に弱いね」といわれたことが

ずっとトラウマになっている。

気が小さいといえばそれまでだが、

「本番」となるといつもドキドキ、ハラハラ、どきまぎしてしまうのが常だ。

そして今回、またヤッてしまった。

「2度あることは三度ある」と、噫呼悲し!

これが人生のリアリティというものか。

もうあきらめるしかない。

否、そうやって、ここまでやってきたように思う。

生きることは悲しい、つくづく思い知らされている。

さて、展覧会のポスターについて。

モノクロームの大きなものを2点、その半分の大きさのを14点で、

会場を写真集のような空間にした。

どの作品も、一カ所だけひかりを彩色し

(たとえば、駅のレール、時計の秒針、窓、マッチの灯など)、

タイトル『飾畫』(小林秀雄訳のLes Illuminations)を入れ、

謹製印を押した。

★(続)


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