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山田勇男

『ヤマヴィカ映画史14』


(写真:『ソノ空虚ノ瞬間ニ』(8mm, 2014)より長沼の風景)

幼年期、祖母に連れられて生まれて初めて見た映画、を思い浮かべてみる。

当時、まだ「私」の小さな町にも、長沼劇場という映画館がひとつだけあった。

夜のふくらみでできたような、暗闇の大きな箱のなかに、

別世界が画面いっぱいに映写されている。

影のような三角山に、長い銃を持った兵隊たちが、

次々と旗を立てては倒れていく場面を覚えている。

今でも思い出すと、何とも悲しい。

頂上に旗を立てたと思ったら、射たれて倒れ、

次の兵士がまた立てて倒れ、が何度も繰り返された。

その光景は、子供心に、積んでは倒れる積木に似て、なんともやるせない。

わけもなく切なくて、悲しいこと。

世界を知るということは、決して大人になってではない。

何も解らない幼年期の頃に出会った現象が、

はっきりとそれを教えてくれた。

★(続)


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